父と娘の日記

或る70歳台父と40歳台娘の日々ー共通の趣味は、読書、音楽鑑賞(主にクラッシック)、登山、旅行等。

「トラッシュ」山田詠美

お題「我が家の本棚」

 

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トラッシュ (文春文庫) (日本語) 文庫 – 1994/2/10山田 詠美 (著)

 

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人を愛した記憶はゴミのようには捨てられない。黒人の男「リック」を愛した「ココ」。愛が真実だったとしたら、なぜ二人は傷つき別れなければならなかったのか。

男、女、ゲイ、黒人、白人―、ニューヨークに住むさまざまな人々の織りなす愛憎の形を、言葉を尽くして描く著者渾身の長篇。女流文学賞受賞。

 

黒人の男「リック」を愛した「ココ」。ボーイフレンド、男の昔の女たち、白人、ゲイ……、人びとが織りなす愛憎の形を、言葉を尽くして描く著者渾身の長篇。女流文学賞受賞。(宮本輝)

 

 

山田詠美さん自身「もうしばらくこんな小説は書けないかもしれない」と語ったというほど密度の濃い長編小説。

大学生のときに初めて読みました。

人を愛する甘美さも切なさも味わえる本。どうしようもないことが、愛おしい。

恋人同士の愛、同性愛、家族愛等の多様な恋愛観を、ココを取り巻く様々な人々を交えて語られる。恋愛に対し多種多様な目線で見つめられる。

リックの不器用な愛し方が凄く切なくて苦しい。そして温かみもある。
ココの心の繊細な機微。彼女は本当に優しくて。恋を大切にして他人も自分もきちんと愛していて、素敵。
恋愛の情熱も虚無も、さらに家族・友情・虐げ・差別・嫉妬といった人間関係の摩擦や機微が痛みと優しさをもって描かれています。

この人がいないと生きていけないと思っていたのに、「一緒にいたらダメ」と知り、「あの人には私が必要だ」と無理を強いて、限界に達することで破局。濃密だった恋だからこそ、終わりは痛々しい。それらを乗り越えて生きていく。

ちなみに、「ジェシーの背骨」のココとジェシーの続編。

 

 

「誰もかれも問題抱えていて、決して、しんから幸福って訳にはいかないってことよね。こうなると、オリエンタルだとか黒人だとか、ゲイだとかって次元の問題じゃあないのよね。そういうことにすり替えたがる人っているけどさ。生活の中のくだらない問題が本人にとっては大事件」                          「トラッシュ」山田詠美より