小沢健二×三島由紀夫 小沢健二デザイン帯付き「三島由紀夫レター教室」
小沢健二×三島由紀夫 小沢健二デザイン帯付き「三島由紀夫レター教室」
小沢健二が、株式会社筑摩書房により三島由紀夫没後50年の特別企画として販売される、1991年に刊行された「三島由紀夫レター教室」(ちくま文庫)に付けられる特別帯のデザインを担当。11月11日(水)頃の書店着荷分より、小沢による書下ろしエッセイを両面に掲載した特別帯が本に巻かれて全国順次発売となります。また、それに先がけ、メモリアルイヤーにちなんだ2020部の限定版帯付き本が、10月31日(土)より全国86店舗の協力書店にて先行発売。
小沢は、雑誌「オリーブ」の92年9月号で“私が文を学んだ本”として「三島由紀夫レター教室」を紹介。当時、これをきっかけに、“突然話題沸騰 どうやら小沢健二さんのお気に入り本らしい”という帯が巻かれ、大きな話題に。
あれから28年、三島の没後50年というメモリアルイヤーに、今回は自らの手で2020年の今にふさわしい新帯をデザインすることになりました。数ある三島の名作の中から、なぜ今この作品にこの帯なのか。このために書下ろしたエッセイとユニークな仕掛けをほどこしたデザインからその理由が分かるようになっています。
三島由紀夫さん没後50年。帯全体のデザインをして、エッセイを書きました。斜めカット帯にスリットが切り抜かれたデザイン。時間と空間をすり抜けてユーモアの空き地へ。そしてまた、戻ってくるために。発売は2020部限定版10/31、普及版11/11。文庫本、¥700弱。限定版は下ツイの書店に予約を。スグ pic.twitter.com/Lsasrr98o2
— Ozawa Kenji 小沢健二 (@iamOzawaKenji) 2020年10月23日
なんて贅沢な行為。なんと「反社会的」な行為。
なんて地下活動的な、秘密裡な行為。
編集されて、冷静に、平静に進んでいく世の中の下に、トンネルを掘るような。
――小沢健二書下ろしエッセイより
先行で発売される、2020部の限定版の帯は、帯壁を破るかのような切り抜き、袖や裏面にまでびっしりと書きこまれたエッセイ、斜めにカットされた変形帯など、文庫版の帯としてはこれまでに見たこともない、異例の仕様。2020年11月11日より全国順次発売(※地域により差があります)となる普及版の方も、2020部限定版の見た目そのままに、表紙カバーの一部も印刷して再現した大型の帯(ダブルカバー仕様)となっています。
内容
職業も年齢も異なる5人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。恋したりフラレたり、金を借りたり断わられたり、あざけり合ったり、憎み合ったりと、もつれた糸がこんがらかって…。山本容子のオシヤレな挿画を添えて、手紙を書くのが苦手なあなたに贈る枠な文例集。
目次
登場人物紹介
古風なラブ・レター
有名人へのファン・レター
肉体的な愛の申し込み
借金の申し込み
処女でないことを打ちあける手紙
同性への愛の告白
愛を裏切った男への脅迫状
出産の通知
招待を断わる手紙
結婚申し込みの手紙
恋敵を中傷する手紙
心中を誘う手紙
旅先からの手紙
年賀状の中へ不吉な手紙
英文の手紙を書くコツ
真相をあばく探偵の手紙
探偵解決編の手紙
身の上相談の手紙
病人へのお身舞い状
妊娠を知らせる手紙
妊娠を知った男の愛の手紙
陰謀を打ち明ける手紙
余計なお世話をやいた手紙
裏切られた女の激怒の手紙
閑な人の閑な手紙
結婚と新婚を告げる手紙
すべてをあきらめた女の手紙
家庭のゴタゴタをこぼす手紙
離婚騒動をめぐる手紙
悪男悪女の仲なおりの手紙
作者から読者への手紙
昭和45年11月25日、いまから35年前、高度成長期の繁栄に沸いていた日本人を震撼させる事件が起きた。作家・三島由紀夫の割腹自殺。この日、三島は仲間の学生4人と共に、東京・市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地で、総監を人質にとり、立てこもったのです。要求は、「自衛隊員の前での演説」。三島は800人の自衛隊員の前で演説をぶちあげると、自ら腹を斬り、命を絶ちました。この事件直前までは、戦後を代表する大人気作家であり、当時の若者を惹きつけてやまない存在だった。
三島 由紀夫(みしま ゆきお、本名:平岡 公威〈ひらおか きみたけ〉、1925年〈大正14年〉1月14日 - 1970年〈昭和45年〉11月25日)は、日本の小説家・劇作家・随筆家・評論家・政治活動家・皇国主義者。血液型はA型、身長は163cm。戦後の日本文学界を代表する作家の一人であると同時に、ノーベル文学賞候補になるなど、日本語の枠を超え、海外においても広く認められた作家。『Esquire』誌の「世界の百人」に選ばれた初の日本人で、国際放送されたテレビ番組に初めて出演した日本人でもある。
満年齢と昭和の年数が一致し、その人生の節目や活躍が昭和時代の日本の興廃や盛衰の歴史的出来事と相まっているため、「昭和」と生涯を共にし、その時代の持つ問題点を鋭く照らした人物として語られることが多い。
代表作は小説に『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』『鏡子の家』『憂国』『豊饒の海』など、戯曲に『近代能楽集』『鹿鳴館』『サド侯爵夫人』などがある。修辞に富んだ絢爛豪華で詩的な文体、古典劇を基調にした人工性・構築性にあふれる唯美的な作風が特徴。
晩年は政治的な傾向を強め、自衛隊に体験入隊し、民兵組織「楯の会」を結成。1970年(昭和45年)11月25日、楯の会隊員4名と共に自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)を訪れ東部方面総監を監禁。バルコニーでクーデターを促す演説をしたのち、割腹自殺を遂げた。この一件は社会に大きな衝撃を与え、新右翼が生まれるなど、国内の政治運動や文学界に大きな影響を与えた(詳細は三島事件を参照)。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
三島は「鹿鳴館」や「サド侯爵夫人」など数多くの戯曲作品を残している。「三島の人生は演劇的だった。『三島由紀夫』という役を演じきりたかったのではないか」。「金閣寺」や「ライ王のテラス」を演出した宮本亞門氏はそう指摘する。
「『楯の会』結成1周年を記念して国立劇場の屋上でおこなったパレードや、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地のバルコニーでの最期。着ている軍服はまるで衣装のようで、ステージの上にいるかのように見える。思想を含めて、自分自身を完璧に演出したかったのだろう」
若い頃、病弱だった三島は、太平洋戦争で兵役を免れる。「どうして自分が生きているのか、死とはなにか。三島は絶大なコンプレックスを抱いていたのではないか」
細江英公の写真集「薔薇刑」で裸体を撮影させたのも、自らの同名小説を基に監督した映画「憂国」に出演したのも「すべてが計画的だった」とみる。演劇人としての三島が重視したのは、肉体に宿る美だ。
映画「憂国」の割腹シーンは「とても危険なことだが、あまりに美しい。能舞台に墨のように血がしたたり染みていくさまには寒けがする」。
「三島は生易しいものに全く興味がなかったのではないか。極限の痛みを感じてこそ生きている実感を味わえると考えていたのかもしれない。肌に触れたり、強く抱きしめて痛みを感じたりすることは、人間が持つ美の感覚の原点でもある」
三島最後の戯曲「ライ王のテラス」が象徴的だ。病気に侵され肉体が朽ちていくカンボジアの王・ジャヤヴァルマン7世は、最後に「肉体」と「精神」に分裂する。「肉体」が勝利を宣言する結末は「体は朽ちても精神は美しい、という考え方への反発ではないか」。
観客に論争を挑むような終幕も特徴だ。宮本氏は「三島は二極論をテーマに据えることが多い。あなたはどう思うか、と観客に問いかけている。物語に完結など無く、常に矛盾があるという正直さに引かれる」と話す。
自然な会話と身体動作で展開するリアリズム演劇とも一線を画す。「子供の頃から歌舞伎や能を鑑賞していた三島の血には、演劇のカタルシスが流れ込んでいる」と指摘する。「三島の戯曲は登場人物の独白が多く、ひとつのセリフも異常に長い。登場人物の悲しみを数分間かけて演じる歌舞伎に近い」
宮本氏は三島作品の演出について「文章の装飾や言葉のリズムがあまりにも美しい。言葉を魂から吐き出さなければ、三島の言葉の強さに負けてしまう。役者には徹底的な訓練が求められる」と難しさを語る。「作品に自決を予感させるテーマが入り込んでいて、三島の人生や思想に触れなければ演出はできない。作り手には壮絶な闇に触れる覚悟が求められる」
「1976年に蜷川幸雄が演出した『卒塔婆小町』を見て、醜悪なものと聖なるものをコインの表と裏として描いていることにゾクゾクした」。人間が抱く矛盾を鮮やかに突きつける三島作品は、今なお観客の心を揺さぶる。
自らを演出、三島由紀夫の劇的な人生 演出家・宮本亞門氏に聞く 三島由紀夫50年後の問い日本経済新聞 電子版より