父と娘の日記

或る70歳台父と40歳台娘の日々ー共通の趣味は、読書、音楽鑑賞(主にクラッシック)、登山、旅行等。

新しい生活様式へ

 

自粛要請が終わったからといって、すぐにかつての日常が戻ってくるわけではない。

当面、行動を変容させた「新しい日常」の中で、「コロナ禍」と付き合っていくことになる。

 

では、それはいつまでだろう。

 

答えは、多くの人が気づいているように、「最短でも1年以上」だ。

 

 感染症はゆっくりとやって来る災害です。そしていつまでも続きます。

 

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「ワクチンか画期的な治療薬が開発されて、広く使われるようになれば、究極的な解決、といえるかもしれません。でも、それには最短でも1年半から2年かかります。それに、ワクチンができない感染症も多いので、COVID-19のワクチンができる保証はないんです」

  

多数の犠牲者が出る感染症が発生したときには、従うべき優先順位のリストがある。

第一に重症化しやすい人を守ること。

第二に新たな感染を防ぐこと。

第三に患者を治療すること。

そして第四がワクチンを作ることです。

ワクチンの製造は最も時間がかかり、最も高い危険が伴うからです。

 

 この危機から抜け出すには、すべての人が感染症にかかるかワクチンの接種を受けることによって免疫を獲得するしか方法はありません。

すぐにどうにかしなければならないとしたら、とりあえず目処の立ったワクチンを使って一過性の免疫を獲得することでしょう。それが4カ月から6カ月ほど持続すれば、パンデミックの連鎖を断つことができます。次は、別のもっと良いワクチンを使って同じようにします。これで乗り切れます。最初のワクチンで大成功を収められるわけではありません。

 

 

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新型コロナウィルス感染症の恐怖

 フォトジャーナリストのジョシュア・イルワンディ氏は、プラスチックシートで全身を包まれたCOVID-19で亡くなった犠牲者をとらえた印象的な1枚を撮影した。撮影にあたっては、被写体となった人物の特徴や性別がわからないよう、細心の注意を払った。

「医師や看護師のみなさんが払っている犠牲と、彼らがさらされているリスクを認識すべきです」

 ナショナル ジオグラフィック協会の支援で、ナショジオの記事(2020年8月号「パンデミックと闘い続ける人類」)のために撮影されたこの写真は、インドネシアに暮らす2億7000万の人々の心を揺るがした。

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新型コロナウイルスへの感染が疑われる患者の遺体が、インドネシアの病院の一室に安置されている。感染を防ぐため、看護師がプラスチックのシートで遺体を密封し、消毒した。(PHOTOGRAPHS BY JOSHUA IRWANDI)

 

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 新型コロナでロボットの活躍の場が増えている
患者の体温や呼吸の測定、病室の消毒、人々の監視などにロボットを活用 

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ボストン・ダイナミクス社が開発した犬のようなロボット「Spot(スポット)」。

米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院ではこのロボットを導入したおかげで、医療従事者が安全な距離を保ちながら、患者と対話し、体温や脈拍、酸素飽和度の測定もできるようになった。 (SCREEN CAPTURE FROM VIDEO BY FARAH DADABHOY/BRIGHAM AND WOMEN'S HOSPITAL.)

 2019年に産業用に発売された四足歩行ロボット「Spot(スポット)」は、ゴールデンレトリバーほどの大きさだ。建設現場の点検や発電所の巡回など、車輪で走るロボットでは行けない場所での作業をこなす。

 その後、新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生し、Spotは新たな技能をいくつか習得した。

 この6カ月、Spotはシンガポールでは隔離された患者に食べ物を届け、日本では野球の試合でファンの人たちの代わりにダンスを踊った。シンガポールではまた、社会的距離を保つよう取り締まっていた係員がマスクをしていない男に刺された事件を受け、ビシャン・アンモキオ公園内の「安全距離確保大使」として、Spotが試験的に導入された。安全な距離にいる人間がこのロボットを使って人々を観察し、事前に録音された「シンガポールの健康を保ちましょう」という音声を再生し、注意を呼びかけたのだ。

 

 一方、米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院では、iPadを備えたSpotが“着任”し、スタッフは患者予備軍の診察を遠隔で行えるようになった。ほかにも種々のセンサーが取り付けられた他のSpotのおかげで、医師や看護師は患者と同じ部屋にいなくても、体温や呼吸を測り、さらには血中酸素濃度の監視もできるようになった。

 これらすべての実験は、「危険な仕事から人間を解放する」よう設計された機械にとって当然の変化だったと、Spotを開発した米ボストン・ダイナミクス社の事業開発担当副社長、マイケル・ペリー氏は言う。新型コロナ禍の今、「危険な仕事」には、人と人が接触するあらゆる活動が含まれる。

 

雑用を肩代わりするロボットの需要は、世界中で急増している。7月上旬の時点で、あらゆる種類のロボットが、少なくとも33カ国でパンデミックとの闘いに直接関わっている。新型コロナの影響で、ロボットは、日常生活の様々な面に入り込みつつある。

 

パンデミックが起きると、病院や診療所はこの突然の事態に対応できるロボットを模索した。過去20年間、地震や鉱山の崩落、テロ攻撃の後にロボットを配備してきたのと、まさに同じ状況だった。

 そうして世界の様々な病院が、「遠隔医療」(ロボットを使って患者と医師をつなぐこと)や、「テレプレゼンス」(患者がロボットを使って、愛する人たちと会ったり話したりすること)用のロボットを導入していった。他にも、自主的に部屋に入って化学物質や紫外線を使った消毒を行うロボットを購入した病院もあった。公安当局は、ロボットを路上や上空に配備し、公共スペースの消毒や、外出禁止令に違反する人々の監視を担わせた。

パンデミック下において、多くの高齢者が、人との密接を望まなくなったため、取引先の在宅ケア機関は、人員削減せざるを得なかった。

 今、病院や他の医療施設は、「最低限の人数で運営し、病気に接する機会を最小限に抑えようとしています」と看護師アシスタント・ロボット「Moxi(モクシー)」を作るディリジェント・ロボティクス社の共同創業者でCEOを務めるアンドレア・トーマス氏は話す。新型コロナによって、医療スタッフはこれまで以上に「スタッフが目の前の仕事に集中できるようにすること、業務に忙殺されないようにすることがいかに大切か」を意識するようになった、と同氏は言う。

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アシスタント・ロボットの「Moxi(モクシー)」と看護師のミン・マクダウェル氏。米国テキサス州ダラスにあるメディカル・シティー・ハート病院では、パンデミックの前から、看護師の負担を軽減するよう設計されたMoxiをテストしていた。 (PHOTOGRAPHY BY SPENCER LOWELL)
 

 あるロボット技術者のチームは、患者に食べ物を運ぶロボットを設計するに当たり、イタリアの病院に相談をした。隔離された新型コロナ患者にとって、食事の時間は「社会的に人に会える唯一の時間である。

 そこで、患者を見舞いに訪れ、愛する人とライブでつながることができるシンプルなテレプレゼンス用ロボットを作り上げた。このデバイスは市販のパーツで作られており、安価でメンテナンスが容易だった。このため、過重労働を強いられている病院スタッフが、運用に時間を割く必要はなかった。なにより、患者とその身内は、互いを見て話をできることを、とても喜んだ。

 

 

 

わかり始めた「命を救える」新型コロナの治療法

ステロイドデキサメタゾン

 COVID-19の治療法の有効性を検証する数多くの試みの中でも、早いうちから成果を上げているのが、英オックスフォード大学を拠点に進められている「COVID-19治療無作為化評価(通称RECOVERY)」試験。

 現在、試験の対象となっている薬の一つに、ステロイド剤のデキサメタゾンがある。COVID-19は過剰な免疫反応を引き起こすことがあるが、他のステロイド剤同様、デキサメタゾンにはそうした反応を鈍らせたり、緩和したりする効果がある。

 6月16日に、研究チームはデキサメタゾンに関する初期の結果を発表した。それによると、酸素吸入や人工呼吸器を必要とするCOVID-19患者において、デキサメタゾンは標準治療のみの場合と比較して、死亡する割合を3分の1ほど減少させた。酸素吸入を必要としない軽症の患者に対しては、デキサメタゾンの有効性は認められず、逆に症状を悪化させることもあるというが、最も重篤な症例においては、デキサメタゾンは生命線となる可能性がある。

 この研究は、7月17日付けで学術誌「New England Journal of Medicine」に正式に掲載されている。

 

COVID-19の治療法の探究において、早い時期に発見された成果としては、回復期間をわずかに短縮できる抗ウイルス薬のレムデシビルがある。一方で研究者らは、体の自然な抗ウイルス反応を増強する方法も模索している。中でも有望な候補が、免疫系のサイトカインの一種であるタンパク質のインターフェロンベータだ。

 通常、細胞がウイルスに感染すると、細胞は多くの種類のインターフェロンを放出して、近隣の細胞が防御のスイッチを入れて、さまざまな抗ウイルス化合物を産生するよう促す。ところが新型コロナウイルスは、こうしたインターフェロンによる罠をすり抜けるのが得意なようで、その結果、肺での初期反応が完全には活性化されず、ウイルスが大暴れしてしまう。

 この点に注目したのが、英のバイオテクノロジー企業シネアジェン社。シネアジェンは長年にわたり、重度の喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患の患者がウイルス感染症を撃退するのを助ける、インターフェロンベータの吸入型ミストを開発してきた。

 インターフェロンベータを投与された患者は、標準治療を受けている患者に比べて、死亡したり、侵襲的な人工呼吸(気管を挿管するなど体に負担のかかる人工呼吸)を必要としたりして重症化する割合が79%減少した。また、インターフェロンベータを投与された患者は、回復した数も多く、息切れも減少しているという。

「ウイルスが肺に蔓延しつつある初期段階でこの薬を投与した場合、高い効果が得られるだろうということはわかっていました。しかし、今にも人工呼吸器をつけようかという患者にも効果を発揮し、回復を加速させることができたのです」

 全体的な数字は有望に見えるものの、この初期の試験は小規模なものであり、薬の効果がどの程度のものかについてはまだよくわかっていない。ホルゲート氏によると、シネアジェン社は今秋、英国でより大規模な臨床試験の協力者を募っているという。一方で、インターフェロンの使用はタイミングに依存するという別の研究もある。これによると、投与が遅すぎる場合、効果が低いか、あるいは末期の患者では炎症を増幅させることもあるという。

 

 

COVID−19への対処に希望を与えてくれるのは、優秀な薬だけではない。

それと同じくらい重要なのは、マスク、ソーシャルディスタンス、手洗いなどの基本的な予防法であり、また標準的な治療の改善。

「よくある間違いは、難しく見える方法ばかりを喜んで採用し、効果があるとよくわかっているものをおろそかにしてしまうことです」と語るのは、米アリゾナ大学の研究者で、ICU医療部長のクリスチャン・バイム氏。

 COVID−19の患者をうつぶせに寝かせること。

「これはCOVID-19患者全般に対して、非常に有効であることがわかっています」

 おなかを下にして寝ることは、血液中に酸素を取り込む肺の能力を高める。心臓は胸の前寄りにあるため、仰向けになっている人をうつぶせにすれば、肺にかかっている心臓の重量を取り除ける。また、肺の後部には、前部よりも血流とガス交換室の数が多く、うつぶせで寝れば、ガス交換室が圧迫されにくく、効率もよい。

 人手の面から言えば、患者をうつぶせにすることはそう簡単でない場合もある。点滴や人工呼吸器につながれている患者の体を安全にひっくり返すには、5人の手が必要になるだろう。しかし、世界各地での複数の症例研究や調査からは、酸素補給との組み合わせにより、うつぶせ寝は意識のある軽症患者の血中酸素濃度も改善させることがわかっている。さらには、この方法は侵襲的な人工呼吸器が必要になるリスクも下げる可能性があるという。

「これは魔法の治療法というわけではありません。それでも、うつぶせ寝に対しては驚くほど多くの患者が反応を示します。しかも多くの場合、かなり急速な反応が見られるのです」と、イリノイ州シカゴのクック郡保健局で救急医療主任を務めるケビン・マクガーク氏は言う。「意識のある人に、おなかを下にして寝てくださいと頼むのは、そう難しいことではありませんしね」

                          ジオナショナルグラフィックより 

 

 

 

 世界中の研究チームが新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいる。

この環境の中で、今自分にできることを前向きに精一杯取り組んでいかなくては‥。

 

 

 

ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年8月号[雑誌]
 
ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年9月号[雑誌]